朝7時に朝食、昨日と同じくお腹一杯になるくらい御飯を頂きました。なにしろ、本日も歩き回る予定なのですから。それから本日で大口を発ちますので宿泊代を精算し、高熊山に向けて出発します。 国道沿いの病院の前に、「海音寺誕生の地」の石碑がありました。石碑の隣には小説『二本の銀杏』の一部分が石碑に彫っており、大口を舞台にした時代小説でやはりこの大口のことを「山また山にかこまれた小さな盆地だ」と書いてあります。 ![]() もっとも今は人気のない国道と化していたが、病院にだけは人が集まり、朝早くから混んでいるんですよね。 ![]() 永禄2年(1559)8月11日 作 次 郎 ○田助太郎 その時座主は大きなこすてをちやりて一度も 焼酎を下されず候 何ともめいわくな事哉 ※ ○には漢字変換不可能の1文字が入ります 施主がケチで焼酎もふるまってくれないと柱に愚痴を書きその上から板を被せて隠していたもので、この時にはすでに焼酎があったという点で注目されているのだそうです。しかし、どうも胡散臭い、そもそも大工が字を書けるのか?と博物館の人に突っ込んで聞いた時は、こう答えていました。 「ええとこに気づいたな、こいつ武士やねん。見てみい苗字あるやろ?」と。 我々は、得意げな笑みを崩すことはできませんでした。 ![]() ![]() 林道を使って高熊山を上がって行き薄暗い森林の中に涼気を感じ始めた頃、斜面に大きな岩石がボコボコ置いてあったので、道をそれて、森に入って見るとそこには無数の穴があいた岩々が兵士の亡霊のように佇んでいました。 西南戦争の名残で激戦地だったことを如実に表しています。薬きょうが拾えるかもしれないと相棒が眼を輝かせて地べたに這いつき始めたので、やれやれと思いつつも一緒に這い回りましたよ。 しかし岩石の迫力ばかりが迫ってきて、薬きょうなんてものは一個も見つからず仕舞い、時間もないので諦めざるを得ませんでした。くやしそうな相棒。なだめながら頂上に向かってさらに上がって行きます。 ![]() ![]() 下の写真は塹壕跡です。もともとは人が隠れるくらいの深い堀に、岩石を盾にしての銃撃戦を繰り広げたのでしょう。 ![]() ![]() ![]() 弾痕の無いエリアが高熊山の北西面、隣の山と連結部分で官軍は攻めにくかったはずだと思います。そして、激しい弾痕の残っていたエリアが南面です。つまり官軍は大口盆地から攻め入った可能性が高く、看板にあった「伊佐市内に残る西南の役の痕跡」の矢印は単なる記号にすぎないことも理解できるわけです。 この辺りの辺見や池辺の動きが分かれば、辺見の涙の意味も変わってきて面白いと思います。 ※想像になりますが、池辺は熊本隊を組織し辺見の下で戦っており、高熊山を死守していたと思われます。それに対して辺見は大口市街地を守っていたようで、その辺見が退却をして涙松の所で振り返ってみると、高熊山から硝煙があがっているわけです。これはつまり、辺見が大口を退いたことにより高熊山が落ちたということがいえるのかもしれず、(実際弾痕が南面に多くついていたので)猛将辺見としては情けなくて泣いたという解釈もできるのではないかと思うのです。 海音寺が作詞した牛尾小学校前を通り、そろそろかと思うもののなかなか着かなく、このまま進んで行くようでは16時大口発のバスに乗り遅れる可能性が高まってきました。曽木の滝、忠元公園、大口城跡、海音寺の生家など今回は諦めなければならなかった事が多すぎて残念無念です。 弾痕の全く無い岩石。高熊山の北西面エリアにて。 ![]() バスの時間になるまで2階の図書館で菱刈町史や大口市史などの興味がありそうな項目だけをパラパラとめくってみます。湯之尾温泉の陥没については「様々な地理条件が重なり陥没」としか書かれておらず、鉱山が一番の原因ちゃうの…とは思ったのですが、書きたくないんですかね。 なお、4階の博物館にもじっくり見学しに行ったのですが、例の男性がいないとつまらなかったのでした。 ![]() そんなこんなで17時半に、水俣駅前へ到着。 ![]() ![]() でも忘れてはいけない、その代わりどこかが「影の部分」を引き受けているっていうことを。それがかつての水俣市だったのでしょう。 水俣駅近くのホテルへ歩いて行くと、「水光社」というスーパーを見かけました。水平社とかそういった類の、不思議な響きのある店名だったので調べたところ、元はチッソの生協だったらしいです。何かめぼしいものを買って行こうかとなって、入りましたが、魚売りコーナーが「長島産」「阿久根産」と水俣湾とほぼ隣接しているような湾名しか見かけなかったので、意識の上ではまだ忌諱されているのかもしれません。「水俣」とは一体なんなのか。 この日の夜ご飯は食堂でチキンライスとラーメンを頂き、早々に眠りに就くべく、人気のなくなった商店街を足早に通り過ぎホテルに戻るのでした。 |