2017年5月 鹿児島4日目:歓喜!これぞ鹿児島、これぞ薩摩


鹿児島市観光の最後の日です。
前日の疲れが少々残ってはいたものの、この日は魚市場で朝食を取ると決めていましたので、がんばって朝5時にはホテルを出ました。ところが外に出たところで異変に気がつきました。マッチに火をつけたような異臭が町じゅう漂っているのです。
下の写真が早朝の鹿児島中央駅前の通りです。この時間だとさすがに人通りが無いですね。 魚市場のある錦江湾に向かうほど灰が積もっています。ここでやっと火山灰が降ったのだと気づきました。生まれて初めての火山灰に朝っぱらからハイテンションになってしまいます。あのにおいは硫黄臭だったんですね。
しかし、だんだんそれどころではなくなりました。 「私は鹿児島では生きてゆけない…」コンタクトレンズをしている私は、灰で目なんか開けてられずとても辛かったのです。
国道もタイヤの跡が無数に残るほど降り積もっていて、交通量が多いので黒くなった車が灰を撒き散らしながら走っていくのです。
もう朝日で活気に満ち溢れて良い時間帯なのに、もやがかかったような薄暗さで、覆面ヘルメットを被って自転車をこぐ人、線路を掃除する人、庭先や車に噴射水をかけまくる人、なんとまあ尋常の朝とは思えない雰囲気でした。 1時間ほど灰の世界を進み、ようやく魚市場内にある「市場食堂」へ到着しました。ネットでは6時30分を過ぎたら混むと書いてありましたが、火山灰のせいか客は我々だけでした。ここで朝っぱらから「カツオ刺定食」と「海鮮チラシ」という豪華な御飯を頂いちゃいました。おいしかったことはもちろんのこと、お値段以上のボリュームでとても幸せです。
鹿児島のやり方なのか、屋久島辺りで水揚げしたさばに、鮮度を保つために首を折るという(普通は、首から針金のようなものを入れて〆る)処置を施して持って来て刺身にした「首折れサバ定食」がこのお店の名物です。残念ながら今回は出回っていないとのことでした。 市場内では魚を捌いたり、包丁を研いでいる人が多かったです。それぞれ自分のワゴン車や軽トラックのそばでやっていたので、ここで処理して持って帰るんですね。
魚市場見学などと言えるような雰囲気ではなかったので、桜島をより間近で見てみようと海辺に向かって歩いていきます。 すると、インギーが我々の前を立ちはだかりました!
強敵図鑑は、インギー写真をクリックすると見れます。

維新館で見た「鹿児島一番新聞」の切り抜きです。記事が面白くて、この時も「あ、インギーやん!」と相棒と笑っていました。 そしてようやく目の当たりにすることができました。神々しき朝日をバックにする桜島。手を合わせたくなります。

ここから鹿児島駅の南洲墓地に向かうべく、市場を出て信号待ちをしていると学童を誘導している男性が居たので、「火山灰はいつもこんなんか」と聞いたら「まだまだ、こんなもんじゃないで」とのことでした。恐るべし。目が痛く、髪もゴワゴワ、喉もいがらっぽくなってきたのでチンチン電車で行くことにしました。チンチン電車の乗り方に慣れていなくて、全くの見当違いの場所で待ってしまったのはここだけの話です。

鹿児島中央駅からわずか2kmしか離れていないのに、鹿児島駅で降りて驚きました。こちらはもっと積もっているのではありませんか。コンビニの店員は「今日はひどい日ですわ」と、鹿児島中央駅周辺とはまったく逆の答えが返って来ました。 せっかくなので手ですくいあげてビニール袋に納めました。火山灰ゲット、帰ったら瓶に移し変えよう。
南洲墓地では、散歩していた初老男性が「今朝起きてびっくり、昨夜は綺麗やったんや」と証言。深夜に爆発して風がこっち向きだったらしいです。まるで一時期騒がれていた福島原発の放射能マップのよう。

南洲墓地は正面ど真ん中に構えた西郷のお墓を中心に、横一列、後一列と規則正しく桐野、篠原などの有力幹部から一般兵まで大小さまざまなお墓がずらっと並んでいます。しかし私はまだここで感慨を得るほど維新にはまっていないようです。 ここで気になったのが、お墓の左右に建っている塔。おそらく穴口があるので蝋燭を燈す塔だとは思いますが、南洲墓地でちらほらと見かけました。灯を点す塔といえば、神社の参道などに並ぶ灯篭を連想しますが、ここは墓地です。この塔は一体なんなのでしょうか?形も風変わりに見えます。

墓地の隣にあった西郷神社の祭神が西郷隆盛でした。火山灰による不快指数が高くそんなにのんびり回っていられる余裕もなかったので、南洲顕彰館に逃げ込みました。しかしながらお勉強会が中心の活動らしく、展示物にはあまり力を入れていなくて残念でした。唯一興味を惹かれたのが、楠正成のお勉強会も盛んに行われているらしく兵庫の湊川神社や南朝のあった吉野の地名が、お勉強会のテーマに出ていたらしきことです。
西郷の血筋である菊池氏と関係があるとかないとか…。 ひと時の平安を得た後は、再び鹿児島中央駅に戻るべく、ものすごい灰の中をもがきながら鹿児島駅へ戻ります。火山灰の清掃車が何台か出勤しているのも見ました。水をたらしながら大きな円形のブラシで回すというよく判らない動きをしています。水で浮遊灰は抑えられるでしょうけれど、どうやって吸い上げているのでしょうか??除去ではなく舞い上がるのを抑えるだけが目的なのかしら?
火山灰をゲットしたついでに、スーパーで木灰を購入してしまいました。あく巻き以外の使い道なんて皆目見当もつかないのに「ついでだから」と購入してしまって、これどうするんだ…(笑)でも、鹿児島県北部では見かけなかったので買っておいて良かったのかも??珍しいし?ちなみに生産地は大隅でした。
またチンチン電車に乗り鹿児島中央駅の隣の「都通り」駅で降りました。やっぱりこちら側は火山灰がひどくありません。昼御飯に入った黒豚カレー屋の店主は「灰はいつもゴールデンウィーク明けに降る」と言っていました。初日の観光案内所の女性もいつもこの時期に噴火すると言っていましたので、そういう共通の認識のしかたが薩摩人の間にあるのかもしれません。
午後からは古本屋巡りです。
鹿児島大学の近くにある「あづさ書店」にて1万円分の本を購入、昨日の土産センターの女主人お勧めの「激闘田原坂」も置いてあったのでついついこれも購入。どこかで珈琲でも飲みながら本を軽く読んでみましょうとなり、「チモトコーヒーとくなが」という味のある喫茶店に入りました。一瞬、スナックかと思ったそのお店は、自家焙煎にサイフォンを使うというこだわりっぷりを見せ付けてくれました。女主人はとにかく「生クリームをたっぷり入れろ」と勧めてきます。おいしい生クリームだったのでこれが一番の自慢の売りだったのかもしれません。
店内が薄暗く本を読む雰囲気ではなかったので、常連客と女主人の薩摩弁の混じった会話を盗み聞きしながら珈琲を味わいました。

この後は示現流資料館を見に行く予定でしたが、途中で「廣文館」という古本屋を発見してしまいました。人ひとりがギリギリ通れる通路に、両脇には我々の身長をはるか凌駕するくらい高々と本が積み重ねている…といういかにもな風情に心惹かれてしまったのです。ここでさらに久光簡略版を購入、実記は3冊で1万5000円と言われ今回は見送り、後日これも買えば良かったと後悔するのでした。他にも郷土史関連の色々な本があるのに、どれも積みすぎて探しにくい、これもまた良いものです。
慣れていない火山灰に疲れてしまって、古本屋のあとはホテルに避難しました。夜ご飯もあまり遠くには出かけたくなかったので、ホテルすぐ近くの海鮮居酒屋にしました。
「いっこう」は、居酒屋なだけあって御飯が置いてなく、もっぱら刺身と焼酎を楽しむようなお店でした。そこでひたすら刺身と薩摩揚げを食します。大将お勧めの「カツオのはらじ(腹皮)」は食感良くおいしかったです。シャケのハラスはよく見ますが、カツオは初めてです。枕崎の特産が鰹節だからカツオのハラスがよく出ているんでしょうか。
大将に火山灰のお話をするとすごく乗ってきて「昨夜遅い時間に鹿児島駅に行ったら灰まみれになっていた」「風向きで大体、灰が降る地区が3つに分かれる」「火山灰は普通の灰じゃないからコンタクトは危険や」などと薩摩人ならではのお話が聞けました。
初日に噴火したと聞いてから三日間、なんだ火山灰なんぞ全然たいしたことないじゃないかと思っていましたが、鹿児島市最後の日に貴重な経験ができ良かったと思います。


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