2017年6月 2日目:雄鷹台山から赤穂を知る


朝はゆっくり8時起床、天気予報に反して晴天なことに気を良くし意気揚々とホテルを出た我々でしたが、観光に便利な周回バスは土・日しか運行していないのでひたすら歩く一日になってしまいました。
まず、海沿いにある赤穂海浜公園に向かいます。江戸時代、海辺を埋め立てて産業を興した広大な塩田は、千種川を挟んで東地域と西地域に分かれており、聞いた話では高級用塩田と安価用塩田という風に、それぞれの塩田を使い分けていたという事も聞きました。これから向かう公園は東塩田になります。今はもう塩田はやっていなく、ニュータウンや観光用施設が建っています。広大な平地なので用途に困らなさそうですね。

赤穂城の近くのホテルに宿泊、右手に堀 日本の名水百選にも選ばれている千種川。ダムのない自然川という点で珍しい。
赤穂海浜大橋から河口方面を眺望す。

ホテルから30分くらい歩いた頃、赤穂海浜公園の交差点にコンビニがあったので水を購入します。
コンビニを出て信号を渡ろうとした時にそれは起こりました。ふざけて肩を揺すらせながら歩く相棒、ふざけすぎて段差に躓きヨロヨロとよろめき、コーンに捕まろうにもそのコーンはフニャフニャだったので体を支えきれず車道に乗り出し、膝を強打してしまったのでした。一連の運動はまるでスローモーションシーンを見ているかのようでした。車の人はみんなこっちを見ているし、恥ずかしかったのでその場を急いで立ち去りましたがかなり痛いらしく「あんたが助けてくれないから膝にヒビが入った」とわめいておりました。
不審がってこっちを見ている住人が居まして、「ちょっと転んでしまいまして…」と謝り、相棒をなだめ、朝から大変でした。

そうこうしてやって参りました、海浜公園。不幸な事故を乗り越えて。

公園管理事務所で絆創膏と消毒液を分けて頂き、その絆創膏じゃ小さかろうと大きな絆創膏も持って来てくれました。赤穂人の優しさに心を震わせました。赤穂人、どうもありがとう。

ここ海浜公園には塩田の擬似体験ゾーンがあり、復元した塩製造施設も建っています。それらを見学しながら、海洋科学館に向かいます。海洋科学館は塩作り体験が売りらしく、受け付けで入館料に体験も含みますがいかがですかと薦められました。せっかくなので体験も申し込み、プレハブのような建物に向かいます。そこは殺風景な教室のように長机が並んでいて、土鍋とガス台が置いていました。我々以外に家族連れや女性1人が参加しており、説明係2人の指示するがままにひたすら沸騰させてかき混ぜていると、やがては塩の結晶が出てきました。しかもお土産用に復元塩田施設で製造した塩と、今我々が作った塩のお持ち帰りができるのです。
説明係の1人に、「塩の製造表示に「平釜製造」と「立釜製造」がありますよね。どう違うんですか?」と常日頃から疑問に思っていたことを尋ねましたが、「立釜なんてありますかね?」と一言言い残してそっぽ向かれました。そういう職分じゃないということなんでしょうね。
しかし、海洋科学館の玄関近くの本棚には塩に関する書物が置いてあり、読んでみると「立釜」と「平釜」について説明が書いてありました。職分じゃあないとはいえ、この書物を一読すべきだと思いました。

塩に関しては海洋科学館よりも公園内の復元塩製造施設のほうが充実しており、揚浜式製塩と入浜式製塩という違いがあることも初めて知りました。揚浜式は汲んできた海水を浜に撒くというもの。に対し、入浜式は海の干満を利用して塩田に海水を流入させるという労働力を軽減させる手法で赤穂を始め瀬戸内海のように干満の潮位差が大きな地域で主流となっていきました。
海洋科学館のみどころは、赤穂や瀬戸内海の地理・風土の展示で、興味深く色々と参考になりました。地形とか海とか気候を知ることは重要だと思うんですよね。
今、海洋科学館で見た「流紋岩」(赤穂は三角デルタ地帯で川によって運ばれてきた流紋岩が多いとの事)が転がっていないか足元を探しながら海浜公園を後にしました。相棒が負傷(?)したのでバスを使いたかったけれど例のごとく平日なので運行無し。「使えねえー」と毒づく相棒。聞こえない振りをして赤穂塩ラーメンの「天馬」で昼食を取るべく目指します。

千種川を山方面に望む。エイがひらひらと泳いでいたのが、河川口らしさを感じた。
これから左に見える山に登ります。 登った山の名前は「雄鷹台山」。石段や手すりなどが良く整備された道でした。 流紋岩だらけで草木が育ちにくい禿げ山だったのを、ハイキングだか山だかの愛好会が一生懸命木を植えているような印象があった。木々に名札が付いていて、「ここに植えた花を抜いた人返してください」の看板も…。
あちこち石仏があるのは修験者の道場だったから?岩山に多いですよね。 時々、後ろを振り返ると非常に眺めが良く、我々が上ってきた尾根伝いの道と千種川の河川口とうっすら小豆島が見えます。 さらに高いところから後ろを振り返ってみました。瀬戸内海に浮かぶ小さな島々も見えてきました。家島の禿げ山の見事さといったら。
赤穂のことを、千種川によって作られた三角デルタで周りは山に囲まれた「陸の孤島」のように表現する人もいましたが、こうして高いところから輪郭がはっきり判る島々の姿を眺めているとあながち孤島ではなかったかもしれない、とも思えます。
海洋科学館で見た流紋岩がまだ頭にあって、石コロを拾っては投げるということを繰り返しながらのハイキングでした。そうしている内に、雄鷹台山の頂上につきました。たったの標高253mですが赤穂の町を一望できます。夜だったら漁火が浮かんでるのかな?それか、市街地の灯りで見えなかったりして? さらに奥の山にも行けるようでしたが地図もないので、登ってきたのと反対側から早々に降りることにします。こちらの道はこれまでの石道とは対照的に滑りやすい砂地で視界も悪く、見所といえばちょろちょろっと水が落ちてくる「真心の滝」くらいでした。

降り立った所が播州赤穂駅の裏手にある、店1つ見かけない住宅街でしたので、ホテルの方角でもある駅前の観光大通りへ向かいます。さんざん迷った挙句、のれんをくぐったのは中華料理屋です。表の通りに「産廃処理施設反対」というノボリを立てていることに興味が沸いたせいもありました。このお店は、酸味強めの味付けだったのが我々の好みに合っていました。
お食事も一段落着いた頃に相棒が「あのー」と産廃反対のノボリのことを切り出しました。知らない人でもどんどん話しかけるその厚かましさは時にはプラスに動くこともあります。最初は女性が説明してくれていましたが、そのうち奥に居た調理担当(?)のご主人がじれったくなったのか顔を出して来て産廃の話を聞かせて頂いたところ、興奮してきたらしくいろんなテーマに話題が広がっていきます。
家島の禿山のことも聞きたかったのですが、ご主人は産廃のことや赤穂のことが話したくてしようがないみたいでした。語り手あってのものなので欲張ってもいけませんね。
さて、ホテルに戻った我々は相変わらず大浴場貸切状態で一日の疲れを癒し、産廃や自然破壊について延々と語り合いながら眠りにつくのでした。大文字のように「赤」の文字が山に浮かびあがっているのを見ながら。


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