2017年10月 1日目 そうだ!ウナギを食べに行こう!!


「腹が減った・・・・、ひもじいぃぃぃ!!」
よほど腹が空いているのか腹の底から声を出すカシ女。まるで駄々っ子のように腕をばたつかせている。
「確かに腹が減りましたな、何かうまいものはないものか。」
そんなカシ女の様子を見ていると、カシ男の腹も鳴ってきて口からはヨダレが垂れてくる。
二人はこの豊かな国で飢えに苦しみ、悩み考えた。そして・・・結論は出た!!
「そうだ!ウナギを食べに行こう!!」

私たちがウナギを食べにやってきたのは浜松駅でございます。空腹に耐えながら観光案内所に行き、そこの女の人に聞いてみた。
「この辺りでうまいウナギ屋ありませんか?」
「浜松の地元民はウナギなんか高いもんめったに食べられへんねん。一年に一回くらいやわ、一匹3000円とかするで。」
うまく質問をはぐらかされてしまったようだ。仕方がない、ここはそばに居たこちらのおじ様に聞いてみよう。
「ウナギのうまい店ゆうても好みがあるからなぁ、しかしすぐそこに『うな炭亭』ちゅうのがあるわ、そこはかなりウマいと思うで。」
浜松の観光案内なんてウナギの事しかないと思っていただけに、ウナギに対する消極的な態度に少々驚いたが、おじ様おすすめのお店が聞けたのに満足し、キュルキュルとうるさい腹の虫を抑えながら急いでうな炭亭へと向かった。
さあ浜松一発目のウナギ屋さんだ、果たしてどんなウナギが出てくるのか?
このお店はビルになっていて、1階で持ち帰りウナギを売り、2階が食堂になっていた。私たちはエレベーターで二階に上がり座敷でウナギ丼と白焼き丼を注文した。二人で6000円という超高級ランチだ。
待望のウナギ丼が到着した。今まで食べてきたウナギと見た目からして違う。
「あれ?なんだかパサパサしているね?」
私は見た目の疑問をつぶやいた。
「でも身はふっくらとしておいしそうやで?」
カシ女はそう言い、待っていられないとばかりに割りばしを豪快に割った。私も遅れてはなるまじとウナギ丼を口にかきこんだ。
「・・・・?なんだかいつもと違うな?ウマいのはウマいが、やっぱりパサパサ?油が全然のってない。」
話しには聞いていて知っていたのだが、ウナギには関東風と関西風があり、関西は焼くだけで、関東はそのあとさらに蒸すらしいのだ。
蒸すだけでそんなに変わらないやろうと思っていたけども、身がふっくらホクホクなかわりに、油がすっかり抜け落ちてしまっているのだ。関西風しか食べた事が無かっただけに、旨みが抜けてしまったウナギには物足りなさを感じた。他に感じた事では、タレというよりも醤油風味が強いのと、ウナギが少々骨ばっているという点が気になったけども、これはこれでおいしかった。
私がウナギについて思案している間にも、カシ女はひたすらウナギをガッツ食いしあっという間に平らげてしまっていた。
「ふぅーー、食った、食った。ウマかったわー、でも関西風のがウマいと思うわ。」
カシ女はそう言い箸を置いた。何も考えずに食っているものと思っていたが、関東風ウナギには違和感を感じていたのだった。しかし腹が減って箸が止まらなかったわけだ。
私たちは少し物足りなさを感じたものの十分に腹を満たし、そのエネルギーを晴天の秋の空にぶつけるために浜松の町を練り歩くのだった。

なんの目的もなく浜松の町を練り歩いていると古本屋がいくつかあった。私たちは獲物に飛びつくかのように古本屋へと入店し、写真の古本屋「時代舎」で、「トヨタの闇」と「浜名湖うなぎ今昔物語」を購入した。このウナギ物語を書いている方はウナギ養殖の稚魚を買いまわっていたらしく、色々な裏話が載っていて非常に面白かった。昔の養殖ウナギは蚕をエサにしていたので臭かったとか、最近一色や鹿児島の勢いがすごくて浜名湖は衰退してきたなど、そうだったのかと気づくことが一杯ありました。ウナギに関する本はなかなかないので興味のある方は是非読んでみるといいと思う。

古本屋を出てさらに町を練り歩いて浜松城に到着した。
「おお!なんという素晴らしい石垣なのだ!!」
私はこの石積みのすばらしさに思わず息をのみ、石垣に近寄り触り心地を確かめる。
「たしかにこれほどの石垣は初めて見たかも・・・」
カシ女もこの石垣に圧倒されているようだ。口をポカンと開けひたすらに石垣を眺めていた。
上に乗っている天守は復元されたものだが、石垣は400年前のものが残っているそうだ。
ゴツゴツとした石や不揃いな石たちが隙間がありまくる状態で積み上げられている。それがすごく荒々しくてかっこいい石垣なのだ。
1590年頃にこの石垣は作られたと書かれていた、まだまだ戦乱の時代で早く作る事も要求され、チマチマした石の加工などはしていられなかったのだろうし、また敵に対する威圧感というものも綺麗な石垣よりもあるような気がする。
主に珪岩と呼ばれる岩が使われているのだが、風化してしまっているので見た目にはよく分からない。浜名湖の北側や西側から持ってきたのを使っているそうだ。

「復元天守閣で何かやっているようだが寄っていくかね?」
私はカシ女に尋ねてみた。
「ウナギで有り金使い切ったからもうお金ないよ?まだまだこのあともウナギ食べるんやで?」
カシ女は財布をフリフリしてお金が無い事をアピールしてきた。残念だが今回の旅の目的はウナギなのだ。ウナギ以外の事でお金を使うわけには行かぬ、と先へ進むことにした。

私たちは浜松を離れ宿泊予定地の舞阪駅へとたどり着いた。この駅付近からウナギ養殖がはじまったそうなのだが、パッと見た目ではウナギの養殖場があるようには見えない。だがウナギのかば焼きを作っている店「竹常」というお店がありこちらで白焼き2匹購入し今夜の晩御飯を確保した。

駅からホテルに向かう途中に自転車に乗ったおじさんが喜々として通り過ぎていった。それなのになぜかこちらに戻ってきて声を掛けてきた。
「なんか変な生き物がおる〜〜〜」
おじさんは動揺しているのか声が震えている。おじさんが行った方向を見てみると何か動物がいるようだった。
「猫ですか?」
私の目には向こうにいる動物が猫のように見えたのだ。
「猫じゃねえよ〜〜〜〜」
「じゃあタヌキですか?」
「タヌキじゃねえよ〜〜〜、なんか分からんよ〜〜〜」
おじさんはそう言いながらどこかへ行ってしまった。私たちは意味も分からぬままその生物がいる方向へと近づいていった。
近づいて行ってよく見てみると動物園とかにいる「カビパラ」という生物に似ているように思った。
しかしこいつはかなりふてぶてしく、私たち人間が近づいているというのにまったく警戒するそぶりも見せない。他にも人が2人居てその方々も写真を撮っておられたが、この生物はまったく気にもしていないようだった。そしてノソノソと道路へ出ていき車にひかれそうになっていた。幸いにも車は止まってくれて事故は防げましたが、この生物はそれすら気にもせずにノソノソと茂みの中へと消えていった。
帰ってから調べてみるとこいつは「ヌートリア」という生物で害獣として指定されているようだ。自治体などが500円くらいで買いとればあっという間に絶滅しそうなトロいやつなのになぜそうしないのか?害獣というものは駆除対象と思っているのだが何をしたいのかがまったくもって分からない。

舞阪駅からホテルに向かう途中のスーパーでごはんを購入しウナギ丼の材料はすべてそろった。あとはこれをホテルで食べるだけだ。スーパーにウナギのかば焼きも売っていたが頭を切り落として売るという関東風のものだった。白焼きなんかも売っているところがさすが浜松という感じがした。

ホテルのフロントでチンしてもらったウナギ。うな炭亭で食べたやつよりも脂っこいのだが、少し骨ばっていて魚臭さが気になった。
「そういえば産地は浜名湖とは限らないと言っていたね、ひょっとすると一色産のウナギかもしれないよ」
私は疑問をカシ女にぶつけてみた。
「堺市のウナギ屋や奈良の卸売市場のウナギが一色産やけど、このウナギと似ていて結構骨ばっとるね」
さすがは絶対味覚を持つカシ女だ、味はすべて分かっているようだ。
「あのウナギの本は一色や鹿児島に怯えていると書かれていたが、今はもう完全に抜かれてしまっているのかもしれないね」
このウナギの白焼きは確か一本1600円で、スーパーで見かけた浜名湖産ウナギと書かれた白焼きより少しだけ安かったと記憶している。近頃高騰しているウナギとしては比較的安めでこの味と考えると十分に満足できる内容かと思った。



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