宇和島旅行6日目


昨日のハイキングにより足腰が少々痛くなり、6日目は静養気味の一日とする。
宇和島駅周辺では朝食を食べれるようなお店が見つけられなかったので、朝ごはんはスーパーフジで購入したカップヌードルやおにぎりを食べる。
のんびりとしているといつの間にやら8時を過ぎている。私は、部屋に入り込んでくる太陽にせかされるようにして外へ出た。
雲ひとつない晴天の空に体の痛みは忘れてしまい、せわしなくさざめく町の喧騒すら気にならなくなる。

ぶらりと散歩しながらやってきたのは和霊公園。公園の展示物や石碑などを見つつ和霊神社の正面鳥居前までやってきた。威圧感すら与える姿が入る人の気持ちを引き締めてくれる。
後々知った事だが、写真のこの鳥居は、香川県牟礼の庵治石という高級石材を使用している。花崗岩の中でもより緻密で固く、水分が浸透しにくい為、風化に強いのが特徴だ。

和霊神社の祭神は山家清兵衛という人物である。
伊達秀宗が宇和島に入部するにあたり、伊達政宗が長子秀宗に対し「清兵衛の言葉はわしの言葉と思え」と特に選んだ将なのだ。
わずか6年ばかりの期間の治績しかないが、当時疲弊していた宇和島の農民に対して税率を安くするなどして慈しんだので、今でも神として尊敬されている。しかし、秀宗や同僚の家老たちとはうまくいかず殺害されてしまったのである。


鳥居をくぐり抜け、須賀川に架かる橋を渡る。楼門が水面にうっすらとにじみ溶けこんでいる。
清兵衛の死後、彼を慕う農民が多数おり、その墓に参詣するものが後を絶たなかったという。さすがの秀宗もそれを放置するわけにもいかず、京都より奉幣使を呼び寄せ、清兵衛を神として勧請し神社を建立したのである。
その奉幣使の文章として伝えられるものに「祟り即ち止む」と記されていることから、祟りが宇和島を覆い、秀宗がそれを恐れていたであろうことが分かる。(参考/司馬氏著・街道を行く)

境内には数多くの摂社が祀られているが、本殿は階段を上がった一段高い場所に建てられていた。本殿を囲む玉垣に酒家中や売買中などと刻まれているのが面白い。

愛媛県史によれば、山家騒動当時の宇和島藩は財政が非常に逼迫していたと目されている。元和六年(1620)大阪城の石垣普請の役を仰せつけられ、工事の責任者として、家老山家・桜田両人を大阪に遣わした。その二人に藩主秀宗が宛てた書状には「金に換える米も大豆もない、家臣に支給する扶持米も不足している」と記されている。
そのような状況の藩の運営方針が、秀宗と山家では考え方があわず、結果、処刑に至った、ということらしい。

境内の摂社の狛犬がゴリラのように見えて少し面白い。
結局のところ、父・政宗が選んだ目付のような家老が、秀宗としては目の上のたんこぶでなにかと意見が衝突していたのかもしれない。しかし、山家殺害に関しては資料に乏しく推測でしか語れないようだ。だからこそ、山家が悲運の将として民衆に慕われることになったのかもしれない。

和霊神社を辞去し、須賀川沿いに西へと進む。少し歩くとそこには凸凹神社という一風変わった神社がある。ここは「博物館めぐり」で紹介。

凸凹神社でかなり時間を費やしてしまい、かなり腹が減ってくるがなんとか我慢し、宇和島市立歴史資料館という海のすぐそばのところを見学する。元々警察署であったが、凝った西洋風なのが珍しいと、ここに移築し、一階では宇和島生まれのイラストレーター高畠華宵の展示が開催され、2階はフリースペースとして貸し出しをおこなっていた。

資料館の隣には伊達宗城が設置させたという砲台跡が修復されている。西洋列強に対して備えたものであり、幕末の人々の意識がうかがえるが、現在の場所では海が見えなくなっているのが少し残念。

昼食は「かどや」という宇和島では有名なお店に入った。腹が減っていたので天丼とカツ丼を注文し、郷土料理も欲しい、ということで「ふくめん」も注文してみた。


「ふくめん」は、糸こんにゃく、みかんの皮、ネギ、魚のすり身(白とピンク)、これをかきまぜて食べる。少し甘い味付けで食感が面白いと思う。おかずにはならず、酒のあてといったところか。

この後、伊達博物館というところにも訪問したのだが、美術工芸品の陳列で写真も撮れなかった為、まったくなんの記憶も残っていない。少し覚えているのは、鍋島家からの輿入れが4人もいた事ぐらいか。

伊達博物館を出た後は、神田川という文人達が愛した川を通ってみる。川より1mくらい上を道路が走っている為、まったくなんの風情も無いし、車の往来も激しい。この川沿いで宇和島を愛でてみたいと思って「とうまん」を持参していたのだが、食べる場所は無かった。



晩御飯はホテルの近くにあった「まえの」というソバ屋さんでかけソバを食べる。汁がカツオの効いたソバ系というよりも、うどん系だったのが少しびっくり、麺はやや硬めだったがとてもウマかった。

この日もスーパーフジで翌日の朝食を購入し、翌日はどうしようかと思いながら眠りについた。





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