旅行で気づいた中国人民について@


私たちにとっては初めての中国観光だったので知らない事ばかりでした。色々と聞かなければいけない事も多く、中国人民の皆さんにとてもお世話になりました。言葉が通じなくても気軽にしゃべりかけてくるし、聞いた事に対しては真剣に考えて答えてくれます。外人だから興味の対象になっているのかもしれません。そんな中国人民について少し思いをめぐらせてみたいと思います。

一番初めに出会った中国人の方が、後で考えてみると中国人らしい方でした。

それは初日の事です。宜昌東駅からのバスを乗り間違え、事前にネット予約したホテル(宜昌国賓半島酒店)の場所が分からなくなってしまいました。上写真が慌てて降りたバス停付近です。時折零れ落ちる霧雨がサラサラと身に降りかかり、少し肌寒さを感じさせます。だんだんと日も落ちて薄暗くなっていき、心細さのせいなのか寒さのせいなのか肩をこわばらせながら歩き続けました。

少しブラブラとしてみても場所の見当が全くつきません。これはまずいと近くにあった薬局(写真の江朝清診所)に入り、予約したホテルの場所を聞いてみる事にしました。
薬局には若い女性の店員が2人居て、頭を突き合わせてスマフォ―を見ています。言葉が通じないのでホテルの名前と住所を書いたメモを見せて、「どっちだ?」と身振りをしてみせます。
女性2人はそれでだいたい理解したようでスマフォ―でホテルを調べてくれました。そしてメモに道順を書いて何かしゃべってきたのですが、もちろん通じるはずがありません。するとその内の1人の女性が「よっしゃ」という雰囲気で白衣を脱ぎ胸を張りながら付いてこいという仕草を見せます。
私たちは内心驚き、ホテルは思ったよりすぐ近くだったのかとホッと胸をなでおろし女性についていきます。
薬局の女性は小柄だったのですが、スタスタ、スタスタと歩くスピードがかなり速い。厳しい表情をしながら後ろの私たちの事を振り返る事もなく前だけを見ていました。
すぐ着くのだろうと思っていた私たちでしたが、ホテルに着くまで徒歩20分程度かかりました。日本とは少し違う交差点をいくつか通り過ぎ、トンネルを越えたところの交差点にたどり着くと、中国人の女性は「あそこだ」と高層ビル群のある付近を指さしました。
ここに着く頃にはすっかりと暗くなっており、街灯や店から光が煌々ともれだし町を照らしています。女性が指さす先には住居なのか店舗なのか分からないビル群がズラっと並んでいます。私たちの頼りない反応を見て分かっていないと思ったのか、女性はホテルの目の前まで案内してくれました。そして、再度「ここだ」と指さし、ニコッと笑うのです。
先ほどまでの表情とホテルまでの距離を考えて機嫌が悪いのかなと思っていましたが、それは間違いだったようです。

彼女の笑顔で少し安心し、「シェシェ、シェシェ」を連発するカシ男。カシ女は気にせずに「ありがとう」と言い、雨が降っているからと持っていた折り畳み傘を渡そうとする。そんなものは必要ないと笑顔で断る中国人女性、さっきまでの厳しい雰囲気は微塵も感じさせません。そして、「バイバイ」と手を振って機嫌良さそうに帰って行きました。

彼女の中国人らしい部分は、小柄だが足腰がしっかりしていてかなり早く歩き、ついてこいと決断すると相手の事は気にしない事。そして、役目が終わると人が変わったような笑顔を見せるところでした。初めて会った人だったのでこの時はかなり驚きました。

同じような事が別の日にもありました。

上写真は4日目に円を元に換金してもらった中国人民銀行です。宜昌中心部には農民銀行やら自動車銀行やら色んなジャンルの銀行がたくさんあったのですが、中国銀行でしか円を元に両替できるところは無さそうでした。
高速鉄道の切符売り場もそうでしたが、中国銀行も窓口の係員と客が触れられないようにガラスで完全にふさがれていて、ガラスの下部にある穴を通してやりとりをします。中国銀行はそんな窓口が入行してすぐの正面にあり、右手には自動ATMのような機械、左手では客が椅子に腰かけ待っていました。
とりあえずどうしたらいいか分からないので目についた警備員に「両替してくれ・小銭を混ぜてくれ・両替証明書をくれ」と書いたメモを見せます。しかし、警備員の男性が少し困った表情をして半分固まっています。すると、どこかから「カツカツ」と苛立たし気に靴音を鳴らし、女性銀行員がやってきました。警備員や私たちをチラ見し、警備員からメモを奪い取ると素早くメモに目を通しました。
眼鏡をかけたインテリ系で中国人らしからぬ良い体格をしている女性だったのですが、メモを見ながら厳しい表情で「チッ」と舌打ちをしたのです。そんな銀行員の態度にカシ男は戸惑いを感じましたが「銀行員でインテリ系やろうし気のせいに違いない」と思って、様子を見守ります。しかし、彼女の舌打ちはさらに続き、窓口のコンピュータ操作をする女性に何かを話しかけては「チッ」、カシ男に何かをしゃべりかけては「チッ」、指定用紙に名前とかを書けと言い、カシ男が自前のペンで書くと、「チッ」と舌打ちし銀行備え付けのペンを使えと言う。もちろん失敗した用紙は「チッ」しながらクシャクシャに丸めました。
後で分かった事ですが、ここは中国人民銀行の支社で外貨両替が初めてだったのかもしれません。ビザを求められたり、モバイルを求められたりし、数人で色々と相談しあっているようでした。
方針がついたのかコンピュータを操作している窓口に行けと言われました。ここからは簡単じゃないかと思っていたのですが、ここでもビザだのなんだの要求されます。窓口の女性は舌打ちはしないのですがため息をつきます。ひょっとして両替できないのか?とビクビクしながら待っていましたが、なんの問題もなく私たちの要求はかないました。「両替、小銭、証明書」すべて手にすることができたのです。
別れの時、窓口の女性はあれだけ憂鬱そうにため息をついていたのに、「ニコッ」と笑います。舌打ち連発のインテリ女性も「ニコッ」と笑います。何故か私たちの周りに集まっていた客や警備員も「ニコッ」と笑います。
先ほどまで舌打ちされまくっていた私たちは、「これが中国なのか」と驚愕した次第でした。
※ちなみに中国人民銀行での交換率は1元=17,1円でした。空港で手数料を除いた交換率が1元=18,1円なので1元につき1円安かったです。

仕事中の真剣すぎるあまり難しい顔をしてしまうのと、自己役割が終了した後の笑顔が、ここでも「中国らしい部分」だと感じさせてくれました。そして、興味があるところ(外人?)に人民が集まってくるのも好奇心が行動に直結する中国人らしいところだと思いました。

舌打ちと言えば下写真の本屋・三峡書店でもされておりました。

6日目に旧宜昌博物館へ行ったときの事です。バスを使いBRTの果園二路駅で降ります。この付近は宜昌市でも指折りの繁華街となっていてお店がたくさん並び、長途汽車駅もあり、人々が行き交っています。人が集まるからなのかは分かりませんが、この付近には新華書店と三峡書店という二軒ともに大きい本屋さんが存在していました。
もちろん二軒とも入ったのですが、まず立ち寄ったのは新華書店。日本でもよくある一般的な本屋でしたが、こちらで特徴的だったのは店員が食べたり飲んだりしていたことでした。しかしながら、本棚の裏側で隠れ気味に食べていましたので、それが少し中国人ぽくないと感じられた部分でした。
もう一軒、三峡書店はオシャレカフェが併設されており、本の種類もかなりの数がありました。中国だと本がビニールで閉じられており、中身を見る事ができない作品も数多くあります。時々見れるようにはがしてあるのもあるのですが、全部そうしてくれといいたくなります。
色々と悩んだあげく、下写真の豊臣秀吉について書かれた本を選び出し、レジへと向かいました。

レジに座っていたのはかなり若い女性でした。バーコードの読み取りがなかなかうまくいかないらしく舌打ちを連発します。先日の銀行で慣れたのでこの時はあまり気にしませんでしたが、若い女性でも舌打ちを連発することに少々驚いたものです。
この本が88元(1500円程)もするのがまた中国らしいと思います。生活必需品や公共交通は安いのですが、贅沢品が高いのです。これでは本を読む人いなくなるんじゃないかと思いますが、カフェ併設しているところを考えても上級国民向けの店舗なのでしょう。

このように中国人は愛想を振りまくなどということはせず、表情にその瞬時で思っている事を出すのです。メモを片手にお店に入るとほぼ必ず怪訝な顔をされますが、それは訝しいと思っているからです。
自分の子供の頃を思い返してみれば、舌打ちやため息といった行為は自分に対する警告としてよくやっていたように記憶しています。そう、その行為は日常であったのです。なんでこんなミスをしたんだ、これは真剣にやらねば、と。それがいつしか、自分の感情のほとばしりである無意識の仕草だったはずなのに、メッセージとして読み取ってしまったため、そういった仕草が非常に気になりはじめ、他人がする舌打ちやため息といったことに第二者(第三者?)は過剰に意味を見出し、ヘタしたら自虐的な方向にいき、自ら不機嫌になるようになっているのではないかと思います。





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