屋台で食べ歩くの巻A


今回、紹介するのはリヤカー式ではない、店舗式の屋台です。店舗を構えてはいるけれども、調理室が露出しており道端でも食べれるようプラ椅子が用意されているお店で、勝手ながら「屋台店」と命名いたします。「屋台で食べ歩くの巻@」で書きましたが、中国人は道路で食べる人が多く、プラ椅子は屋台・屋台店の必須品となっております。武漢では素泊まりのホテルに連泊したので、ほぼ三食がこういったお店にお世話になりましたが、道端で食べたのはこの時一回だけです。人が行き交う道端で食べるのはなかなか勇気の要る事であり、この朝食の時、店内の食事スペースは空いていたのですが、積み重ねて置いてあったプラ椅子を指さし「これを使いたい」と緊張しつつ伝えてみました。

店員さんは「使いや使いや」という感じでテキパキと赤いプラ椅子を道路のやや隅っこに綺麗に並べ、「さぁ座ってくれ」といった素振りをしてくれました。3個なのは、きっとテーブルと、カシ男の分のつもりだったのでしょう。そして、本来はきっと、店員に声をかける必要なんかまったくなくて自分で勝手にプラ椅子を取り出して並べるものだったのではないか?と、店員さんの中国人らしからぬ機敏に並べる様子を見てハッと気づいたのです。
道端で1人座り込んで食事をしていると、日本人にとってはじっくりと腰が落ちつけられない違和感があります。ですが、行き交う中国人にとっては日常のことなので誰も私のことを気にも留めていないようでした。

この日の朝食は、武漢名物の熱干麺と千層餅を二人で頂きました。上写真は宝豊二路という日本の商店街をもう少し大きくし賑やかにした通りで、ここで食べたお店の熱干麺なかなかいけましたが、中国旅行で4回ほど食べた熱干麺は、どれも麺がもっさもっさとしておいしいとは思えず、茹で置きをしているお店が多いのだろうと推測しています。

千層餅を買ったお店です。これを1個欲しいと指差したにも関わらず、怪訝な顔をされ、盛んに何か言ってきます。戸惑った我々は顔を見合わせるも、女店主さんが計量機を指さすのを見て「お好み焼きもどきですら、量り売りなのか!」と、内心この店を選んだのは失敗だったかもしれない…と思ってしまいました。日本のパック売りに慣れている感覚では、本当に量り売りは抵抗感が強いです。結局、融通をきかしてくれて二人分にちょうどいい量を入れてくれました。女店主さんにとって我々は印象深かったのだろう、3,4日後カシ男が一人でここに買いに来た時に、「(同じものを指さして)これか?」と言ってきたのだそうな。本当に融通が利く中国人です。
ちなみに、地域の違いというのが大きいと思うのですが、この店の方に限らず武漢に於いての店の人達は舌打ちやため息は全くしませんでした。それが宜昌とはかなり違っていました。気楽に話しかけてくるのは同じですが、武漢では顔が笑顔なのです。宜昌に慣れてしまっていた私たちはそれが不可解で怪訝な顔をして中国人を見ていたのでした。


武漢の宝豊二路にて。クリーニング屋が歩道で洗濯をし、木に引っ掛けている棒に干しているのが見えるだろうか。洗濯物を高いところに干すための洗濯棒は仕事道具なのです。このように活気のある歩道では、多くの客が歩道で食べていて、雰囲気に溶け込んでいるのがいい感じです。


一方、湖北博物館の帰りに通った下写真は4車線が走る大通りから入った小道で、武昌駅周辺という事もあり歩行者の往来が賑やかで道で食べる人は見かけませんでしたが、調理場は道路に向かって開かれています。こう言った「屋台店」にはもう1つ特徴があって、同じアパートをいくつも連結したかのようにどこまでも続く幅広いアパートの1階が屋台店になっているということなのです。中国式の都市計画なのでしょうか、一気に都市を造り変えたり大規模な開発を推し進めることができる「社会主義」の強みを実感できます。

中国語があまり判らないと、メニューの写真があって注文しやすいお店にしてしまいます。それでも、10日間も中国にいると土豆はジャガイモで香魔ェキノコだと何となく判ってくるようになります。言語習得には現地居住が一番かもしれませんね!カシ男は目ざとく、飛行機で隣になったfrenさん(中国人で在日8年とのこと)がお勧めしてくれた武漢名物「三鮮豆皮」がメニュー載っていることを見つけ、早速注文していました。衛生放送のアンテナのような、取っ手のついていない大きいフライパンで作る三鮮豆皮は、小麦粉を焼いた生地にご飯を敷き詰め、ひき肉、タケノコ、ネギ(?)をパラパラとかけたもので、具材は全然違うけど日本のお好み焼きに似ています。


左が「三鮮豆皮」です。お勧めするだけのことはあって、とてもおいしいです。frenさん曰く朝ごはんに「三鮮豆皮」と飲み物に「蛋酒」を頂くのが武漢の定番で、frenさんの大好物なセットでもあるそうです。具材に味がよく染み込んでいるので、調味料をかけなくても十分頂けます。右は「炒花飯」と言い、具材に人参とキュウリが使われています。生食か漬け物しかイメージのないキュウリではありますが、高温でさっと炒めるとおいしいんですよね。間食にキュウリをポリポリ食べている中国人を何人か見かけたので、キュウリが身近なのだろうと思います。


「蛋酒」は後日に違うお店でいただきました。「蛋」は「蚤(ノミの虫)」ではなく「蛋白質」の「蛋」の漢字を使います。中国語では「卵」を意味し、直訳すると「卵酒」ということになりますが、実際は卵の入った甘酒でした。中国で味わえる数少ない「甘い飲み物」の1つだと思います。お米の柔らかい甘さが味わえますが、お汁物というよりは8分粥の感覚なので「三鮮豆皮」とのセットとしては、言い換えるとご飯入りお好み焼きとご飯入りスープの定食みたいな感じになるので私には合わないと思いました(生粋の大阪人のカシ男ならありだと言うかもしれません)。


宣昌市のホテルでもほぼ毎朝飲んでいた豆乳です。ホテルで飲んだ豆乳は水っぽいわりに豆臭くて、豆腐を作る過程で出てくる上澄みに近い味覚がしましたが、武漢の屋台店で頂いた豆乳は砕いた豆を絞った汁から作ったと思われ、「豆のいい香り」がしてとても飲みやすかったです。
お店の人が豆乳の入ったカップに、スプーンで何かを入れるような仕草をして聞いてきました。前の人が砂糖を求めていたのを見ていたので、「砂糖を入れるか?」という意味であることを理解していました。理解できた事が嬉しくて、「そうそう!砂糖入れて入れて!」とスプーンで注ぐ仕草をして見せたのですが、その仕草を繰り返してしまったために3杯入れられてしまいました。よく観察してらっしゃる…!
そしてまた、「お店の人が掻き混ぜて味を均一にならしてから出してくる」という思い込みに気づく必要があります。これは、先に紹介した「蛋酒」でも同じで、底に砂糖が固まっていました。左が豆乳(中国語では「乳」の漢字が違う)で、右が豆腐老(実際は人偏に老の漢字)という飲み物です。どちらもおいしかったですが、砂糖は無いほうがいいと思います。


次に紹介する食べ物は、中国語では何と言う名前なのかは分からないままなのですが、「中国風おでん」と仮に名付けたいと思います。
店の前の歩道に鍋のようなものがおいてあるなぁと、覗き込んだところ「おでん」に似ていたのが気になり入店したお店です。白いバケツの奥にあるブリキの洗面器のような鍋に、具材がゴロゴロと無造作に放り込まれていました。野菜はレンコンくらいで、ウィンナーと卵そして練り物がメインです。具材1つ1つに指差して、店員さんに紙カップに入れてもらいます。

具材を7種類入れてもらって、7元でした。1個につき1元なのでしょうか、中国の外食に慣れるとこれは「ちょっと高め」という感覚です。写真は中途半端にかじった具材に、卵の黄身が散らばったスープでお目汚しかとは思いますが、どうしてもスープの色を見ていただきたくてこの写真を載せます。日本のおでんのお汁とは全然違い、妙に赤っぽいです。すすってみると、ピリピリッと麻と辣の両方の辛さが舌をしびれさせ、味覚としては「塩味」がしました。これは何かの味に似ている…考えるまでもなく、「火鍋」の味だということはすぐ判りました。
とは言え、宜昌市で食べた恐怖の火鍋(レストランで中国料理をいただくの巻)のように、油ぎっていなかったので食べやすかったです。

中国では基本、注文を受けてから調理をしてくれます。レストランと違って、屋台店は調理場が歩道に向かって開かれているので、調理しているところもみれますし、混んでいなければ店員さんとの会話にチャレンジすることもできます。場合によっては、調理待ちの他のお客さんに話しかけられることもあります。注文、金銭のやり取り、商品の受け取りなど、あらゆるやり取りが歩道で行われるという「オープンさ」が屋台店の良いところだと思います。




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