屋台で食べ歩くの巻@


私がイメージする「屋台」は、店ごとまるままの移動が可能であるゆえに飲食可能なスペースを持たないというもので、日本だとたまに軽トラックの屋台が笛を吹きながら近所を回っているのが「屋台」のイメージに近くて、下写真のお店がまさにそれであると思う。この店は、宜昌市のホテルの前でいつも夕方から商売を始めているのですが、どこかから三輪オートバイと、セットにくっつけられた屋台を持ってきて店を開けます。
「山東省本場の煎餅果子」と書いてあり、湖北省(武漢・宜昌両市とも)ではよく「山東省本場」を売りにしている店を見かけました。山東省は美食の名産地というのが定番になっているのでしょうか。


クレープのように薄い膜を焼いて、生卵を割り入れ広げます。素早く、煎餅の割ったようなものやパクチー、ネギ?、ナッツ?に赤色の辛いものなど、あらかじめ刻んである具材をいろいろ盛っていき、最後に包んでくれます。これで5元です。


御覧の通り、「煎餅」ではなく、クレープ風なのです。刻み野菜をパラパラ振りかける程度だったため「お菓子」みたいなものだろうと思っていたのですが、意外にお腹が持ちました。クレープで包まれた薄焼き煎餅の粉々になった食感がなかなか面白く、調味料や香辛料も日本と全く違っていておいしいので一度お試しあれ。


こちらは武漢市の湖北省立博物館の前にあった「紅藷焼き」売りオンリーの屋台さんです。屋台の難しいところは量り売りであることが多いことだと思います。「おいくら?」と我々は1個当たりの値段のつもりで尋ねて、「8元」だというので、「それじゃこれ1個」と指差すと取ってくれて計りだして「13元だ」と言う。量り売りだったのか、と初めて気づくけど断りにくくてそのまま頂いてしまいました。
時々天秤棒を肩に引っ提げ、竹網籠にサクランボやライチ、枇杷などのフルーツを盛って路傍で売っている行商人がいますが、これも基本量り売りで、量で注文するのか価格で注文するのかいまだに分からないままでいます。ちなみに、グラム売りではなく、斤・匁の単位で表現されるのが一般的なので日本人にとってはどれくらいの量か見当がつきにくくて、戸惑うと思います。


この紅藷は、お粥とまぜたりもするし、紅藷饅頭として作られたりもするし、用途がとても幅広く、この2つの料理はホテルの朝食バイキングで頂いたことがあるのですが、紅藷入りであることに全く注意を払ったことがなかったのです。
さつまいもよりはやや水っぽくてふにゃっと柔らかくなりやすい、それ故に主食(?)と混ぜて料理することに向いているのでしょうね。色はとても鮮やかなオレンジ色で、カシ女こと私はその味を「にんじんに近い」という風に表現したのですが、カシ男はそうでもなかったようだ。


おまけです。紅藷粥です。芋の色が出てますよね。朝ごはんに屋台の紅藷焼きを半分ずつ食し、博物館見学の後、昼ご飯として注文したのが「紅藷粥」だったのです。そうなのです、まったく頭の中では「紅藷」が朝食べたばかりのあの芋と結びついていなかったのです。食べて初めて、「朝の芋の味がする!これ…ホテルの朝食バイキングで出てるお粥もこんな芋甘い味がしたわ。全て紅藷つながりだったのか!」とようやく理解したのでした。


中国の屋台の特徴としてもう1つ挙げておきたいのが、果物売りがとても多いことなのです。屋台が密集している地帯があったら、1/4は果物売りじゃないかと思う。我々が中国旅行をしていた時期(5月頭)では、ライチ・パイナップル・さくらんぼ・スイカがメインでどこでも売られていました。意外にフルーツパラダイスなのです。
パイナップルだと1/4カットで4元が相場、安い所だと3元だったりします。武漢・宜昌では自動販売機もコンビニもほぼ無かったので、こういう果物売りは喉を潤してくれとても助かりました。こういう素朴な甘さを日常としていると、スナック菓子なんてもういらなくなるかも…。


こちらは「臭豆腐」と言う、20m離れていても独特の臭いが感知できる食品です。どんな風に独特かというと、脇の汗の臭いがツーンと鼻につくあの「すいー臭い」とでも言おうか。レストランでは見かけることのなかった商品なので、もし屋台で見かけたら臭いだけでも是非お試しください。我々は買いましたけれども、酸味臭が激しいだけで、お味は普通の豆腐を揚げたもので意外に食べれます。ただ食べたあとも、胃袋からすいい臭いが時々鼻を突き抜けてきます。
そんな刺激臭がたまらんのか、客が次々と買い求めにやってくる人気商品なのです。


4日目、宜昌市の夷陵区へ散策に行った時の屋台が、今回の中国旅行の中で一番のお気に入りでした。長江を見に行く途中の「婦人児童センター」すぐそばにあった屋台で、多くの人が群がっているのでむくむく湧き上がる好奇心のままに吸い寄せられるように人波の中へと入って行ってみると、若い男性がバーコードを首からぶら下げて注文を受け付けていました。実に多くの客がそのバーコードにスマフォを当てては、渡されたふっくらお米入りカップに、おかずを盛っていくのです。
スマフォを持たない我々は勿論、現金で5元/1人を支払ってカップを貰いました。

さぁ、人波に飛び込むわよ!
大きな寸胴のような鍋から女性がカップに米を盛ってくれます。他の料理店で食べるパラパラのお米ではなく、炊いた後蒸しているのかふっくらとしたお米で、卵を入れることでさらにふっくらとし、黄色く綺麗な色合いに仕上がっています。
屋台の荷台にはごらんの通り多くのオカズが並べられ、とても魅力的なメニューとなっております。唯一の欠点が、オカズを掬うスプーンが絶対的に足りないということくらいでしょうか。そのために、カシ女ことわたくしは、大き目のスプーンを手にしてしまったら離せなくなってしまい、次々と色んなオカズをカップに乗っけていきます。横から手が伸びてきて、スプーンをよこせと催促されまくりましたが、そんなのお構いなしのカシ女でした。


自分が盛り付けたご飯の出来上がりです。上がカシ女作で、下がカシ男の作品です。この屋台のオカズは唐辛子が入った辛いものが多くて、みなさんはお構いなしに唐辛子も含めてどんどん自分のお椀に盛っていくのですが、同じように入れていると辛すぎて日本人には厳しい味となってしまいます。
ここの特徴は米が無くなるまで何度でもオカズをご飯に盛ってもいい事です。いくら支払ったかは分からないのですが、洗面桶のようなものを持って来て米を入れてもらいガッツ食いしているおじさんもおられました。


地元の人たちや日本人観光客、ガッツ食いおじさんだけでなく、写真のように蜂蜜採集の方も虜にしてしまうお店です。さすがに珍しかったのか漏斗を開けて中身を見る方たちも時々いました。


飲食スペースを持たない屋台では公共の道路が食堂になります。その為、プラスチック椅子はどの屋台も持ち歩いているのか、歩道のあちこちに並べていたり、自分用に置いているのを見かけます。そして、中国人はこのプラ椅子が大好きなのです。
日本では弁当なども車の中で食べたりすることが多く、あまり歩道で食べている方をお目にかかる事がありません。ハイキングやバーベキュー、公園などに限らず、都市部の歩道で食べても開放的で非常に美味しく感じられるのではないでしょうか。こういった文化をもう一度考え直すべきかもしれません。





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