高速鉄道 漢口−宜昌東


中国のさまざまな都市を結ぶ高速鉄道(新幹線)が、武漢市の漢口駅から発着しています。我々が一番緊張したのが、宜昌東駅行の高速鉄道の購入でした。予約もしていなかったので、売り切れていたらアウトな訳です。その場合、鈍行列車での雑魚寝も覚悟しておりました。

さて、写真に納まりきらないくらいにデカい漢口駅です。多くの高速鉄道を乗り入れている大きな駅なので、駅前にも切符自動券売機コーナーにも大型ディスプレイで「次発○○、▽▽行」というような時刻表をひっきりなしに入れ替えています。駅前にはマクドナルドやケンタッキーもあったりして、駅の大きさを除けばあまり日本と変わらない風景です。

さあ!高速鉄道の切符を買いに行きましょう。
自動切符券売機もありますが、我々は外国人なので使えません。中国では居民身分証明証なるものがあり、これがないと図書館や高速鉄道、他にも博物館などの公共施設・機関が使えない制度になっているため、それを持たない外国人は居民身分証明証の代わりにパスポートを提示する必要があります。それには窓口でなければ買えないのです。
付近の人に筆談で聞きながら探し回ったところ、「売切符所1(售票処1)」をやっと見つけました。電光掲示板にそれぞれの窓口の業務が書かれていますが意味がさっぱり判りません。そんな中に1つだけ雰囲気の違う窓口がありました。それが写真の左端の「値班主任」と書かれた窓口です。(値班主任の意味が分からないのでご存知の方教えてください)
私たちは思い切ってここに並び、「もし違っていたらどこで買えばいいか教えてもらおう」というくらいの気持でいました。

そして下写真のメモを窓口に見せてみました。

するとあら不思議?「ticket」だとか「購入」だとか、中国語ではない文字が混じりながらも窓口の男性は理解してくれたのです。カシ男は動転しながら色々しゃべろうとしましたが、主任の頷きにより落着きを取り戻したのです。さすが主任!
主任男性はこちらのメモに目をやりながらコンピュータを操作し、当該区間の高速鉄道の時間と値段を画面に表示させ、それでいいか確認するような素振りを見せます。カシ男が先ほど見た大型ディスプレイの空席表示では「漢口ー宜昌東 一等席 --- 二等席 ---」となっており、売り切れているとばかり思い込んでいたのです。カシ男は切符が買えることを大いに喜び主任に対してひたすら頷き返しました。これで無事に手続きは完了し、パスポートを渡し、番号と名前を打ち込み、1人108元を支払い切符を手にすることができたのです。

高速鉄道でもX線検査や金属探知機を通過する必要があります。そして外国人の切符は自動改札機が読み取ってくれないので、有人(人工)改札口を通る必要があります。共産主義の国だからなのか、駅員も検査員もかなりのんびりしているので、切符とパスポートを見せても「あー進みなさい進みなさい(チンチン、チンチン)」とちゃんと見ているかどうかも怪しい。
上写真が1F待合室で、給湯コーナーがついています。そう言えば、武漢空港にもありました。多くの人が群がり、カップラーメンに注いでいるのは屋台文化が根強く残っている中国ならではの風景なのでしょうか。

下写真はエスカレーターで登ったところの2F待合室で、吹き抜けの3Fには飲食店・スーパー・土産屋などが並んでいます。その下に、高速鉄道のホームへの乗車ゲートが番号順に並んでいます。その前のベンチに大量の人達が座って時間が来るのを待っているのです。

自分たちが乗る高速鉄道の乗車ゲートも大型ディスプレイを見れば簡単に分かります。時間に余裕があるので、ここで昼ごはんを食べ、コンビニで飲み物を購入し予定の時間までのんびりと待ちました。

発車時間の15分程前になると乗車ゲートに駅員が現れ、切符を確認しながら人を通していきます。中国では並ばないというようなネット情報も見ましたが、4列ほどにだいたい並んでいました。時間よりかなり早くわらわらと並び始めるので、並ぶのが好きなのではないか?とすら思えます。行動が遅れている私たちは列の後ろの方に並び、また切符をチェックするの!?と内心思い、何か声をかけられたらどうしようと緊張しながらパスポートを用意していたのですが、ここでは見せる必要はなくホッと一息。
だだっ広い待合室から開いた小さなゲートを通り、長い階段で降りていくと高速鉄道のホームです。ホーム幅も広くて天井も高く開放感があり、どんだけ広いんだと見渡すと、なんと14番ホームまで見えました。しかも、ホームの先が全く見えず天上界への入口のごとく光を放っているばかりです。

高速鉄道は時刻ぴったりに発車しました。中国では時間通りに動かないとネット情報にあり少し不安だったのですが、本当に情報というのは当てにならないと実感します。さらに、2等席だから狭いのかな?とも思っていたのですが、比較的空いていたこともありとても快適に乗車できました。それでは、あの空席表示パネルの「宜昌東行 ---」は一体なんだったのだろう?混んでたんじゃないの?と、こうやってどんどん謎が増えていくわけです。
武漢〜宜昌は、大阪〜東京に相当する距離であり日本だと13,000円(自由席)ちょっとするのですが、こちらは同距離で2000円程(指定席)なのだから予約が使いこなせてたならとても使い勝手が良いと思います。

車窓の景色を眺めながら二時間のんびりと高速鉄道の旅を楽しみます。途中、いくつか駅に止まったのですが、どこも同じような造りだったのが少しつまらなかったかな。車窓の風景などはまた別の頁にて書いていきます。

二時間後、乗務員が「イーチャントンダオラー(宜昌東駅に到着いたしました)」とアナウンスしながら車内を練り歩き、やがて宜昌東駅へと到着、ほぼ時間通りの到着となりました。
中国の鉄道は入る時と出る時で改札口が違っています。ですので入れ違いになることはなく、出口に向かう人民たちはすべて同じ方向へと向かっていき、その大量の人民達が一斉に出るには狭すぎるゲートを通り外へ出ます。出るときのチェックは何もなく切符を回収されることもありませんでした。

宜昌市は湖北省で人口が2番目に多い都市です。鉄道の利用者もかなり多く、タクシー乗り場やバス乗り場はかなり混み合っていました。三峡ダムという観光地への玄関口でもあるので客引きも激しい場所です。明日のジョーがしょっていそうなズック袋タイプのバッグを背にした、観光客とは一線を画する、農民工らしい人達も見かけられ、武漢よりも中国に来たという実感が湧く駅でした。とある人が引きずっていたのは、キャリーケースならぬハンドタイプの台車で、積み込まれていた袋はすべて「化学肥料」でした。

上写真がバス乗り場から宜昌東駅を見たところです。この建物の二階が乗車ゲートの待合室になっており、一階は切符を購入する窓口と、荷物検査のある改札口となっています。私たちが降車した場所はこの写真の奥の方でした。この写真には載っていないのですが、他にも「旅游集散中心」と書かれた駅もすぐそばにあり、そこからも高速鉄道が出ているようです。

宜昌東駅の高速鉄道切符売り場で早めに帰りの切符を購入しておきます。ここでは値班窓口ではなく普通の窓口で、例のメモを見せて切符を購入しました。中国に来てからはメモの便利さにとりつかれ、すっかりメモ魔になってしまいました。
ディスプレイでは「執行票価」「半価票」「学生票」と3つの種類の票を取り扱っているのが分かります。ですが意味はさっぱり分かりません。「半価票」を買える人ってどんな人なのでしょう?

この写真も同じ所にあったディスプレイですが見方が難しいです。空席の数を表示していると思いますが、「0」と「---」の違いがよく判りません。一等座もかなり人気のようですし、次回は一等座に乗ってみたいものです。

上の写真は宜昌から武漢へ帰るときの宜昌東の高速鉄道待合室です。中国ではスマフォ―がとても流行っていて、どこに行ってもスマフォ―画面を覗き込んでいます。人は溢れんばかりにいるのですが、非常に静かに大人しく電車を待っています。

帰りは「成都ー上海」区間だったので非常に混み合っていました。D638が私たちの乗った電車なのですが、何故かカシ女が中国人女性2人組に「この電車は荊州に止まるのか?」というような事を聞かれていました。丁度私たちと同じD638の電車だったのできちんと答えることができました。(身振りでここだと訴えただけ)
行きは主任が隣同士の席を確保してくれていたのですが、帰りは混み合っていたからか、カシ男とカシ女は別々の席となりました。カシ男は明らかに外人だと思われていたようで、席を変わってくれと言われることは無く、中国人同士でガミガミと席がああだこうだと言っているのを見物していました。
それに対してカシ女はしょっぱなから指定席がすでに子供に座られており、何かガミガミ言われたのでメモを渡す。「換ー下位置」と書かれて理解し、子供が指差す席へカシ女は座ろうとした。すると、そこには違う女が座っており、子供が女に何かガミガミ言っていたが、「まあいい、その辺に座れ」というような素振りをみせ、命令どうりにカシ女は空いていた女の隣に座りました。
これで一件落着かと思ったのも束の間のことでした。また別のおっさんに指さされたので、うんざりしてきたカシ女はややキレ気味に、女に日本語で「そこが私の席だ、お前が行けや!」と怒鳴ったら、言語は違えど通じてしまいました。すみませ〜んて感じでニヤニヤして女は去って行き、元の木阿弥に収まったのでした。
指定席だからと徹底してルールを守るのは、必ずしも「普通のこと」とは限らないのだ、と思い知った一幕でした。




旅行記に戻る